イギリスのユーモア小説の大家、P.Gウッドハウスがたいそう面白い。
私のお気に入りはエムズワース卿シリーズだ。
エムズワース伯爵の身辺で起こるちまちまとした困った出来事に「脳みそが綿菓子のような」殿様が難儀する物語。これが、くすくす、では収まらない、ギャハハハとつい馬鹿笑いしてしまう爆笑小説なのだ。
といってもこのエムズワース卿、落語に出てくる赤井御門守のようなイッちゃってる殿様ではない。
ご本人に別段意図もなく、美しい庭と平穏な生活を愛してるだけなのに、ただ愛読書「豚の飼育」を静かに読んでいたいだけなのに、なぜか物事が妙な方向に行ってしまう気の毒な殿様なのだ。
そして脇役達の個性も秀逸。というか、この脇役達こそが揃いも揃って我が愛すべき殿様を煩わせるのだけど。
読んでいて思い出すのは落語「天狗裁き」。
ギャグ(またはボケ?)らしきものはほとんどなくストーリーがただ展開するだけでそこはかとなく(なのにギャハハハ)可笑しい。そこがとても上品なかんじのする(なのにギャハハハ)お話なのである。
エムズワース卿は細身でおっとり(ぼんやり)したおじいちゃん、ということで、私の中のイメージはもう完全に益田喜頓です。
この作家、1881年(明治14年!)生まれで主要作品は1920年〜1950年代。そんな昔の?と思うことなかれ。落語と同じ、センスに時代は関係ないのだ。
“エムズワース卿もの” と並ぶ代表作 “ジーヴスもの” も面白い!
蛇足ながら、読んでみようと思われた方、文藝春秋PGウッドハウス選集をお薦めする。国書刊行会のウッドハウスコレクションもあるが、翻訳文に、例えば「癒し系」といったような「今風の言い回し」が散見されてがっかりさせられる。気難しいババアの私はこういうのがどうにも気になってしょうがないのよ。(No.3)
1 件のコメント:
新しい世界を開いてくれそう! チェックします
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