4/24/2012

102 Edith Grove


みなさんのおうちにもあると思います、こんな細長い箱。
その箱の中に入っているこれまた細長い冊子にキース・リチャーズによるこんな一文があります。

ブライアンがロバート・ジョンソンのファーストアルバムを持っててさ、俺はそれで初めて聴いたんだ。ブライアンと知り合って、奴のアパートに行って。
いや、実際、椅子とレコードプレーヤーとレコードが何枚かあるだけのただ寝るだけの場所ってかんじのところだったけどさ。

ブライアンがそいつをターンテーブルに載せたときはたまげたね。わかるだろ?
で、俺はブライアンに訊いたんだ。「こいつは誰だい?」ってな。

「ロバート・ジョンソンだよ」「それはわかってるさ。でももうひとり一緒にギターを弾いてるやつがいるだろ」
だって俺にはふたりで弾いてるみたいに聴こえたからさ。でもロバート・ジョンソンは全部ひとりで弾いてたんだ。

歌もスゴイしギターなんかまるでバッハを聴いてるみたいだった。それにあのリズムだろ?これを一度にやるなんて、こいつには脳みそが三つあるに違いないぜって思ったもんさ。(抜粋・拙訳)


こんな話をするブライアンとキース、微笑ましいですね。

この「椅子とレコードプレーヤーしかないブライアンのアパート」の場所はわかりませんが、1962年夏、ロンドンに出てきたミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ブライアン・ジョーンズ、そしてカメラマンのジェームス・フェルジ(ナンカー・フェルジ)は、チェルシーはエディスグローブのアパートで共同生活を始めます。

アパートの前で  1963年


















ここでの彼らの生活は、来る日も来る日も朝から晩まで、ロバート・ジョンソン、エルモア・ジェイムス、ジミー・リード、マディ・ウォーターズ、チャック・ベリーなどのレコードを聴いてはギターを弾く毎日でした。
「ヘイ、どうだいこのギター、まったくたまんねぇぜ。」なんて話していたのでしょうか。

イギリスの白人の小僧がアメリカの黒人の音楽に、熱に浮かされたように憧憬を募らせた、めくるめく日々だったんですね。

(それにしてもキースがbeautiful dumpと呼んだこの部屋がどんな状態だったかを考えると恐ろしい。キースのお母さんが週に一度やってきては洗濯物を持って帰っていたそうだ)

この後、スターになった彼らがしたことといえば、チェス・スタジオ(*1)やマッスルショールズ・スタジオ(*2)でのレコーディング。
ようやくあこがれの地にたどり着いたという思いだったことでしょう。(*3)

このいとおしきミーハー心!
なんてかわいらしい若者たちなんでしょう。
(こういうところこそが、私がローリング・ストーンズを愛する理由なのです)


そしてこれが2012年3月の 102 Edith Grove。(*4)  少しも変わっていませんね。























エディスグローブはキングス・ロードの脇を少し入ったところにあります。
パンクスはとうの昔に姿を消しましたが、ヴィヴィアン・ウエストウッドとマルコム・マクラレンの「ワールズ・エンド」は健在です。


逆回転時計は今もぐるぐる回ってます

何かにのめり込む日々は楽しい。
それで未来が開けるならなおのこと。

ローリング・ストーンズ青春の一席で、おあとがよろしいようで。



++++


キースが「夢見心地だった」と言うあこがれのマディ・ウォーターズとの
初共演(22 Nov. 1981Checkerboard LoungeChicago
うれしさのあまりちょこまか動いてマディとまるで息が合わないミックと、
妙に真面目くさってギターを弾く2匹のグレイハウンドのようなキースとロニー。





notes
(*1)シカゴ、チェス・スタジオでの録音は1964年と65年に計4回行われた。
それをまとめた「CHICAGO CHESS SESSION」という編集盤がある。

(*2)自分たちのレーベル第1弾アルバム「Sticky Fingers」のため19691224日、アメリカツアーの途中で「Brown Sugar」「Wild Horses」を録音した。Wild Horses」のあの南部の匂いは 3614 Jackson Highway の匂いなんですね。

(*3) 1964年のチェスはともかく、1969年当時の彼らは世界的スター。アラバマ州の田舎町マッスルショールズでは「あのローリング・ストーンズが来た!」という扱いだったが、むしろストーンズの方が「あのマッスルショールズに来たぜ!」だったと思う。


(*4)このアパートは今も誰かが住んで普通の暮らしをしている。
世界中からファンがやってきては写真をバチバチ撮られて気の毒ですね。






今週の当番 No.3・ bunyayurisses

4/19/2012

Dear ジャッキー

皆さん、ジャッキーといえば誰を思い浮かべますか?
ジャッキー・ウィルソンにジャッキー・ムーア、意表をついてのジャッキー・グラハム。
確かにどれも悪くない。しかし私にとってのジャッキーは・・・そりゃ当然ジャッキー・チェン!!

アクション界永遠のナイスガイも、もはや還暦に手が届くほど。
最近はちょっと小難しい映画で老練ぶりもアピールしたりして。
でもね、ジャッキーといえば、やっぱり若さ全開カンフー作でしょう。

蛇拳に酔拳、天中拳。龍拳、笑拳、蛇鶴八拳。うーむ、どれも名作なんだよなぁ。
見たら確実にマスターしたくなるその吸引力の凄まじさ。
私も幼少期にまんまとハマり、自宅の小部屋で見えない敵と日々闘っておりました。

若くして他界したことで神格化されたブルース・リーに対し、わんぱく小僧感を守り続けるキュートなジャッキー・チェンにこそ、僕は今なお理想の男像を見出しちゃうわけです。

先の“ナントカ拳”シリーズの多くが、ダメな青年が修行を通じて(べらぼうに)強くなるという、メンズ・シンデレラ・ストーリー。そこにベタな笑いとリズミカルなアクションを融合させれば、そりゃぁもうキッズは大興奮なアミューズメント・ムービーになるのは必至。毛嫌いする理由は1ミクロンもありません。

え?お子様向けには興味ねぇ?もっと渋くて強いのが好み?

そんな“無骨マニア”な貴女には、タイトルもゴツゴツな「少林寺木人拳(しょうりんじもくじんけん)」をおススメしましょう。

父親を殺されたショックで話すことができなくなった青年が、洞窟に幽閉された達人に秘儀を伝授され、仇打ちに向かうけれど、その仇こそ実は…というストーリー。

色恋も笑いも一切排除した男気溢れる忘れじの地味作なわけです。    

ここでのジャッキーはまだ22歳。まだあのコミカル・キャラも未完成。シリアス風味でのお届けとなります。

この作品の注目点は2点。
    なんと主役のジャッキーにセリフがない。そう、ほぼ全編しゃべらない。
    修行の戦いの相手が木人。つまり“木の人”。

王道「ピノキオ」や、「ネバーエンディングストーリー」の喋る木、「トイストーリー」のウッディなど、木人(っぽいもの)が登場する映画は老若男女を虜にする名作揃い。
そう、当ブログでお馴染み「木登りジャケに駄盤なし」よろしく、「木人映画に駄作なし」なわけであります。

そして今作における木人ですが、北欧も驚愕するであろう究極のシンプル・デザイン。
子どもたちが段ボールで再現することを前提としたとしか思えない優しさに満ち溢れた逸品なのです。

ま、能書きはさておき、そのシュール&クールなオープニング映像を体感ください。



木人に影響されたのか、肝心のジャッキーの顔までもがシンプルになっているという想定外の事実は敢えて素通りするのが大人のマナーです。

そして日本公開時のオープニング・クレジットのバックでは、わざわざ日本語のテーマ曲を用意する力の入れよう。いい時代でしたね。

“ミラクル・ガイ”と題されたこの曲、一度聴いたら鼻歌レパートリー入りは確実なアッパーな1曲。もんたよしのりと葛城ユキの中間(ややユキ寄り)級のハスキー・ボイスで、こっちのアドレナリンを絞り出します。

 この他にも、初期ジャッキー映画のテーマ曲には“いろんな意味で”カッコイイ曲が多かったりします。あんなのやこんなの…折をみてまたご紹介いたしましょう。

韓流もいいけど、たまにはこういうので体の芯から熱くなってみませんか?

(中野カメオ)

4/16/2012

こんなのありました。

甘いか辛いか アーロン・ホットソース




























黒人歯みがき made in Taiwan


No.3 bunyayurisses

4/09/2012

染井の桜


以前、出張先でタクシーに乗ったときのこと。運転手さんが話しかけてきた。
「あたしは花が好きでね、引退したら全国の県花を見て回りたいんですよ。お客さんはどこから?」
「東京ですが」
「ああ、いいねえ。春、染井に行って桜を見たいものです。きれいだろうなあ」
巣鴨~染井界隈は用事で何度か訪れたことがあったけれど、「ここがソメイヨシノの発祥地か」くらいにしか思っていなかった。ただ、運転手さんがあまりに熱く語るものだから、それ以来「染井」が胸の奥に引っかかっていた。発祥というけれど、誰かが作ったものなんだろうか? 書名に惹かれて手に取った本、木内昇さんの手になる『茗荷谷の猫』の一編「染井の桜」がぼくの疑問に答えてくれた。

侍の徳造は草木好きが高じて植木職人になる。「庭じゃなく、景色を造りたい」との思いから、徳造は金になる朝顔や菊ではなく、桜の変わり咲きを造ることに精を出す。何年もかけて掛け合わせを繰り返し、ついに息をのむほど美しい桜ができた。人々はそれを「吉野桜」と呼び、「移ろうから、儚いから、美しい」とたいそう愛でた。
ところが、せっかく苦労して造ったというのに、徳造は苗木を安い値で誰にでも分けてしまう。職人仲間から、もっと高い値を付けないともったいないと諫められても、徳造はこの桜が世に広まらないことが何より悲しいと言って聞かない。ならば、せめて自分の名前を付けろと言われると、せっかくのきれいな花に自分の名前を付けるのは野暮だと返し、違う呼び名を提案する。染井生まれだから「染井吉野」でいいじゃないか。

 絵画や音楽もそうだけれど、背景を少しでも知って接すると、見えたり聞こえたりするものががらりと変わるから面白い。いま暮らしているのは古い町で、庭に桜の木のある家が少なくない。桜の木を残すために路が妙な感じに曲がっていたり、敷地がいびつになっていたりするところもある。桜の多くはソメイヨシノで、静かな町を静かに彩っている。立ち止まり、徳造さんのことを思いながら見上げてみる。枝に開いた薄紅色の中に江戸の植木職人の心意気が息づいている気がして、うれしくなった。


巣鴨のほかにも品川、茗荷谷、本郷、市ヶ谷、千駄ヶ谷、浅草、など東京の町を舞台にした物語が収められていて、それぞれが時代を越えてつながっている。散歩に誘ってくれる本です。


aoi

4/08/2012

木登りジャケに駄盤なし!ー(残念編)

「木登りジャケ」と認定されなかったもの残念編として一挙に公開しちゃうわ!
もし登っていたらもっと名盤になったのかしらん?(笑)?


こらっ!ポーズとってないで、一人くらい登りなさい!

腰掛けちゃーダメでしょ!

とってもみんな登りたそうなんだけど・・・


コートの汚れから木登り失敗したようね。ダメ!もう登らないでっ!罪なタイロン!

これはいけません。返す返すいけません。

覗き見してる場合かっ?

くつろぎ過ぎでしょ!登ろうよ!

足はかけてるんだけど・・・登ったら木が倒れちゃうかな〜と神経質そうに考えているわね。

石垣じゃないでしょ!子供なんだから木に登りなさい!

イチャイチャしてないで、登りなさいな!

ゾウさんしがみついてないでサ!マンガさん握ってないでサ!ダークよ、永遠なれ!

キーーーッみんな怠慢だわ!

秀樹!流木ではダメなんだって!
 乃美枝

木登りジャケに駄盤なし!ーその10

祝!来日予定!
結成50周年を記念して2012年8月にビーチボーイズが日本にくるーー!
そんな彼らの木登りジャケよ!


THE BEACH BOYS / THE BEST OF THE BEACH BOYS
「レコード発売10周年記念豪華記念盤」と帯にある日本編集のLPベスト盤。
初期のサーフィン&ホットロッド・ナンバー満載の1枚よね。
さすが、アル・ジャーディンはキッチリと猿型の木登りを披露してくれているわ!

デニス・ウィルソンも足は木にかけているんだけど・・・、もう一息なのに残念。
ブライアン・ウィルソンのオセンチな写真写りも素敵な木登りジャケよ。

乃美枝

木登りジャケに駄盤なし!ーその9

クーッ!ヘヴィメタから1発どーーよ?でもちょっと、コワーーーイ!



IRON MAIDEN / FROM FEAR TO ETERNITY THE BEST OF 1990-2010
1990年から2010年までの第2期黄金期アイアン・メイデンの2枚組ベスト盤。
怪物さんの持っている斧に乗っかっているのは鳩かしら?ちょっと平和だわ〜!
木登り度:★★★☆☆
足の裏に吸盤がついているとしか思えないわ!
山火事度はトップランクね!

乃美枝

4/01/2012

ブルース歌謡放浪記:ご当地編(第3回)

ふらふらと各地のご当地ブルースを紹介する「ブルース歌謡放浪記」。
今回はこちら!

■ 船橋ブルース / 木立じゆん



 
・作詞曲:坂下キロク/編曲:山倉たかし/演奏:テイチク・レコーディング・オーケストラ

・C/W:栄町の夜(作詞:門井八郎/作曲:久慈ひろし/編曲:山倉たかし)


・レーベル:テイチクレコード、番号:SN-747

千葉県は船橋にやってきました!
有名な船橋ケイバもあり、様々な思いが、うごめくところよね!
そこにはやはりブルースがあるわ。

浪々と流れるトランペットとツイン・ギターの音が醸し出すリゾート感溢れるイントロから、さわやかなミディアム・フォービートでさすが船橋らしい開放感に満ちたブルースに仕上がっていると思うわ。そんなサウンドにのり、かつて塩田であった三田浜や駅前通り、そしてセンター広場と、船橋のそこここで募る未練をネットリと歌いあげる木立じゆんもなかなか良い。「酒が言わせた言葉が憎い」と歌われるてるんだけど、いったいどんな恥ずかしいことを言ってしまったのかしらん。考えたら眠れないわ!
あー船橋ヘルスセンターの大滝すべりで、もう一度滑りたくなっちゃったわ〜 
By のびちゃん