みなさんのおうちにもあると思います、こんな細長い箱。
その箱の中に入っているこれまた細長い冊子にキース・リチャーズによるこんな一文があります。
ブライアンがロバート・ジョンソンのファーストアルバムを持っててさ、俺はそれで初めて聴いたんだ。ブライアンと知り合って、奴のアパートに行って。
いや、実際、椅子とレコードプレーヤーとレコードが何枚かあるだけのただ寝るだけの場所ってかんじのところだったけどさ。
ブライアンがそいつをターンテーブルに載せたときはたまげたね。わかるだろ?
で、俺はブライアンに訊いたんだ。「こいつは誰だい?」ってな。
で、俺はブライアンに訊いたんだ。「こいつは誰だい?」ってな。
「ロバート・ジョンソンだよ」「それはわかってるさ。でももうひとり一緒にギターを弾いてるやつがいるだろ」
だって俺にはふたりで弾いてるみたいに聴こえたからさ。でもロバート・ジョンソンは全部ひとりで弾いてたんだ。
歌もスゴイしギターなんかまるでバッハを聴いてるみたいだった。それにあのリズムだろ?これを一度にやるなんて、こいつには脳みそが三つあるに違いないぜって思ったもんさ。(抜粋・拙訳)
こんな話をするブライアンとキース、微笑ましいですね。
この「椅子とレコードプレーヤーしかないブライアンのアパート」の場所はわかりませんが、1962年夏、ロンドンに出てきたミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ブライアン・ジョーンズ、そしてカメラマンのジェームス・フェルジ(ナンカー・フェルジ)は、チェルシーはエディスグローブのアパートで共同生活を始めます。
アパートの前で 1963年 |
ここでの彼らの生活は、来る日も来る日も朝から晩まで、ロバート・ジョンソン、エルモア・ジェイムス、ジミー・リード、マディ・ウォーターズ、チャック・ベリーなどのレコードを聴いてはギターを弾く毎日でした。
「ヘイ、どうだいこのギター、まったくたまんねぇぜ。」なんて話していたのでしょうか。
イギリスの白人の小僧がアメリカの黒人の音楽に、熱に浮かされたように憧憬を募らせた、めくるめく日々だったんですね。
(それにしてもキースがbeautiful dumpと呼んだこの部屋がどんな状態だったかを考えると恐ろしい。キースのお母さんが週に一度やってきては洗濯物を持って帰っていたそうだ)
この後、スターになった彼らがしたことといえば、チェス・スタジオ(*1)やマッスルショールズ・スタジオ(*2)でのレコーディング。
ようやくあこがれの地にたどり着いたという思いだったことでしょう。(*3)
このいとおしきミーハー心!
なんてかわいらしい若者たちなんでしょう。
(こういうところこそが、私がローリング・ストーンズを愛する理由なのです)
そしてこれが2012年3月の 102 Edith Grove。(*4) 少しも変わっていませんね。
エディスグローブはキングス・ロードの脇を少し入ったところにあります。
パンクスはとうの昔に姿を消しましたが、ヴィヴィアン・ウエストウッドとマルコム・マクラレンの「ワールズ・エンド」は健在です。
逆回転時計は今もぐるぐる回ってます |
何かにのめり込む日々は楽しい。
それで未来が開けるならなおのこと。
ローリング・ストーンズ青春の一席で、おあとがよろしいようで。
++++
キースが「夢見心地だった」と言うあこがれのマディ・ウォーターズとの
初共演(22 Nov. 1981@Checkerboard Lounge、Chicago)
うれしさのあまりちょこまか動いてマディとまるで息が合わないミックと、
妙に真面目くさってギターを弾く2匹のグレイハウンドのようなキースとロニー。
notes
(*1)シカゴ、チェス・スタジオでの録音は1964年と65年に計4回行われた。
それをまとめた「CHICAGO CHESS
SESSION」という編集盤がある。
(*2)自分たちのレーベル第1弾アルバム「Sticky Fingers」のため1969年12月2〜4日、アメリカツアーの途中で「Brown Sugar」「Wild Horses」を録音した。「Wild Horses」のあの南部の匂いは 3614 Jackson Highway の匂いなんですね。
(*3) 1964年のチェスはともかく、1969年当時の彼らは世界的スター。アラバマ州の田舎町マッスルショールズでは「あのローリング・ストーンズが来た!」という扱いだったが、むしろストーンズの方が「あのマッスルショールズに来たぜ!」だったと思う。
(*4)このアパートは今も誰かが住んで普通の暮らしをしている。
世界中からファンがやってきては写真をバチバチ撮られて気の毒ですね。
(*4)このアパートは今も誰かが住んで普通の暮らしをしている。
世界中からファンがやってきては写真をバチバチ撮られて気の毒ですね。
今週の当番 No.3・ bunyayurisses
2 件のコメント:
うわーーーー!
待ってました、ゆりさんのストーンズ噺!
これはまだまだ続きそうですね~。
いくらでもネタがあるでしょう。
これを「ストーンズ噺」と呼ぶあなたはさすがです。
でも、もうそんなにネタはないです~
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