お伊勢詣りは江戸っ子の夢。
江戸っ子はみな一生に一度はお伊勢詣りに行きたいと願っていたそうです。
それがかなわなければ一家にひとり、お店(たな)にひとり、長屋でも積み立て(伊勢講)をしてまで誰か代表で、それもままならないときは飼い犬を行かせたというのですから驚きです。
(なにもそこまでという気もしますけど)
そんなブームの中登場したのが、ご存じ弥次さん喜多さんの二人組がお伊勢詣りに行く道中を面白可笑しく書いた十返舎一九の「東海道中膝栗毛」です。
みなさんも学校で習いましたね。
「東海道中膝栗毛」は享和二年(1802年)から文政五年(1822年)の実に21年間に渡って出版されました。
江戸の人々の心を掴んだこの大ベストセラーは落語の元ネタにもなり、映画は大河内伝次郎からエノケン、勘三郎(R.I.P)まで数知れず、200年経った現在も日本人なら知らない人はいません。
私も映画はいくつも観たし、漫画も読んだ。落語『二人旅』は談志が最高。
超有名古典の名作は、抱腹絶倒の元祖スラップスティック・ノヴェルなのです。(たぶん)
でも、昔々子供向けに訳されたものを読んだ記憶はあるけど、実は原典をちゃんと読んだことはない。
「東海道中膝栗毛」、全貌はいかなるものか?
ということで、一気に全部、読んでみた。
いやいや、馬鹿ですねー。
想像をはるかに超えたくだらなさ!
基本的には道中の宿屋で悪戯、騒動を起こし、洒落や狂歌の言葉遊びを随所に挟む、というパターンなのですが、これがもう全編下ネタ。
お下劣極まりないギャグのオンパレード。
こんなものとても子供には読ませられません!
そもそも、弥次さん喜多さん、このふたりはどういう関係か?
喜多さんこと喜多八(29歳)は陰間(かげま・若いうちは男を、年をとると女を相手にする男娼)で、弥次さんこと栃面屋弥次郎兵衛(49歳)はその馴染みの客、弥次郎兵衛は元々駿河の裕福な家の出だったのが放蕩がすぎて喜多さんと駆け落ち同様に江戸に出てきたのです。
そう、このふたりは元男色の関係。
なぜかある時点で止めたようで、本編ではそのような雰囲気は皆無です。
それどころか、道中はほとんど買春ツアー。
行く先々で女を口説く。
それも玄人素人、“しわくちゃ婆ァ”、あろうことか障害者にまで隙あらば手を出そうとする異常ぶり。
(大抵失敗)
下ネタといってもあっちの下ネタもあればこっちの下ネタもあり、思わずゲェーって言っちゃうほど。
これじゃあ信心も何もあったもんじゃありません。
さて、どうです?
ゆかいな二人組がほうぼうで騒動を巻き起こしながらのんびりお伊勢さんを目指す江戸時代のお話、なーんてイメージは粉々に砕け散ったことでしょう。
いいんでしょうか、古典の名作?!
いいんですか、文科省、教科書にのせちゃって?
では最後に、長瀬智也と中村七之助というナイスなキャスティングでクドカンが映画化した「真夜中の弥次さん喜多さん」、日本橋出立の場をご覧いただきましょう。
お伊勢詣りへ行こうぜ、ベイベー♪
*江戸の文体、さぞや読みにくかろうと覚悟したが、まるでうたうように書かれており、意外にスラスラ(でもないけど)進みました。
今週の当番:bunyayurisses
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