『素朴絵』って?
著者は「リアリズムのみを目標としないおおらかな具象画」を『素朴絵』と表現していますが、これってぶっちゃけ「ヘタな絵」の事。ヘタで突っ込みどころ満載。遠近法が日本で定着する前だからってこれ~?とか、文筆が主だからって、この挿絵で良いのか~?ってね。そこには、元々技術が無いからヘタなのも、本当は上手なのにイイ味出して描いてるのもあるのだけれど、ひっくるめて近代以前の日本絵画史の中に散らばるゆる~~い絵画の世界の大博覧本。
この中では偉い殿様も名高き高僧も怖ーい閻魔様も、みんな「ゆるキャラ」にしか見えない。
例えばこの絵「かみ代物語絵巻(西尾市岩瀬文庫蔵)」釣り竿持って前を歩いているのが竜王でワニ(?!)に乗ってるのが山幸彦だって….。山幸彦といえば神さまですよ。この竜王の体の反り、腕のありえない曲がり方。でも私がカビラ・ジェイだったら、間違いなく「いーんです!」と力強く叫んでいるところ。
かみ代物語絵巻 |
著者の矢島新さんは幼かった頃に見た武者小路実篤の額入り色紙を、「子供にも描けそうな絵がなぜ額に飾られているのか、不思議に思った」とあります。それって多分このあたり。
仲よき事は美しき哉 |
確かにね、誰でも必ず一度は目にした事があるこの額。これがそんなにポピュラーなのは、決して上手(リアル追求、本物そっくり)ではない絵でも愛でる文化が、昔から日本にはあるからだと。
さて、そこで現代では「ゆるキャラ」ね。「ゆるキャラ」ってどんなもんなんだろ、と眺めていたら、最強のゆるゆるが私の故郷・横浜市戸塚区にいてビックリ。
ウナシー 浜ナシが大好き♡ |
話は逸れましたが、日本絵画の系譜の一面を学びたい人にはもちろん、「リアリズム」に疲れている人、「リアル」を求められても無理よっと思っている人、カワイイ~に斜に構えたい人、とにかくツッコミたい人、この本はそんな方にお勧めします。
また、もしもあなたが「地図が上手に描けないのよねぇ」と悩んでいるなら、ぜひこの本に掲載された参詣曼荼羅の数々を見てみて下さい。大丈夫。地図としては役に立たなくても、日本にはそれを愛する伝統がありますから。
●●今週の当番:轟美津子
2 件のコメント:
釣りざお持ってる竜王さん、まー、フライ・フィッシングのキャスティングは10時から1時までなんで、これ見るとバック・キャストが大きすぎるね。ま、初心者にはよくあるものさ。
ギリギリ1時....じゃないか。
この釣り竿は、山幸彦が海幸彦から借りてたのを返しに行く所なんです。竜王ったら、他人様の物を預かってるにしては、大振りな扱いですよねぇ。
コメントを投稿